ここまでするかアメリカ大学スポーツ


 

■ 大学スポーツ新時代の到来

 

「早稲田アスリートプログラム」

早稲田大学が2014年度から実施をする、“文武両道を高いレベルで実現することを目指した学生アスリートの育成プログラム”が、様々な観点から話題となっています。

 

・単位不足だと試合・練習禁止 早大、体育部2400人対象(日経)

・早大:運動部員に文武両道「アスリートプログラム」(毎日)

・【スポーツ随想】大学でも母校愛より授業優先 時代の流れ…「スポーツバカはいらない」 (ZAKZAK)

 

 

筆者も少々お手伝いをさせて頂いている”早稲田スポーツの新たな展開”プロジェクトですので、

報道が、「学生の取得単位が基準に満たないと部活をすることを禁じられる」という側面にばかり注目が集まり、

本質的な意義である「そのような状況に陥らないよう就業支援をし、人格陶冶のための教育を行う事で、文武両道を体現する学生アスリートを育成して社会を支えるグローバルリーダーを輩出する」という点よりも話題になっていることは、何とも言えない部分もありますが、

それでもこのような取り組みが”日本の”大学スポーツで始まったことには大きな意味があるでしょう。

 

日本の、と含んだ記載をした背景には当然理由があり、大学スポーツの本場アメリカでは既に「NCAA(全米大学体育協会)」が中心となり、前述した「早稲田アスリートプログラム」のようなプログラムに先行して取り組んでいます。

NCAAが義務付けている「Academic Standard」では、たとえばDivision1(最高ディビジョン)に所属している大学の学生は、

2年生次には、「卒業単位の40%以上の取得」と「GPA1.9以上」を、3年生次には「卒業単位の60%以上の取得」と「GPA2.0以上」が、運動部に所属するための条件として明示されいてます。

そのため、各大学ではこの基準をクリアし優秀な選手が不足なく万全の状態で試合に臨めるよう、「アカデミックアドバイザー」と呼ばれるアスリートに勉強を教えるチューターを置き、学習面のサポートにも力を入れている事例が多くあります。

このような取り組みの甲斐もあってか、文武両道を実現する優秀な人間がプレーをしている大学スポーツにはより一層の魅力が生まれ、その価値が更に高まっていると考えられます。(もちろん例外はどこの国でもあるでしょうが…)

 

■ ここまでするかアメリカ大学スポーツ!

 

 ・メジャーリーグやプレミアリーグを超える市場規模のスポーツビジネス(THE SPORTS BUSINESS)

NCAAを中心とした大学スポーツの市場規模やビジネスモデルについては以前もこのブログで解説をしましたが、アマチュアスポーツとは思えない程の多額のお金が動いており、チームの運営面でもプロクラブを圧倒的に上回るような体制・戦略が見受けられます。

たとえば、2014年バスケットボールの男女王者に輝いた「コネチカット大学」

 

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「Huskies」という愛称で親しまれる同大学のAthletic Division(AD=体育会)。

公式サイトには各種競技の最新ニュースが集約されている事はもちろん、

リアルタイムでのデータ配信、チケットの購入や壁紙のダウンロードなども当然のようにでき、

更にはオークションコーナーまで公式サイト内に設置されています。

 

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また、当然のようにスマートフォン向けアプリも存在しており、

 

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試合の日程・結果やハイライト映像も確認出来ますし、

ソーシャルメディアのアカウントも「Facebook,Twitter,Instagram,Youtube,Pinterest」をオフィシャルアカウントとして運用しています。

 

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(http://www.pinterest.com/uconnhuskies/

 

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http://instagram.com/uconnhuskies

 

「完璧」に近い状態ともいえるようなデジタルメディアの運用をしてファンとのエンゲージメントを高める取り組みをしていますが、

着地点としての、ファンからの支援を受ける体制もうまく整備されており、「UCONN CLUB DONOR」という位置づけでファンからの支援を募っています。

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大学に対しての支援(寄付)なので、税制上の優遇措置などがあるのは勿論ですが、

同大学の場合は、更なるベネフィットとして、

$500〜$999の支援をした「COACH」と呼ばれるレベルのファンに対しては「アメフトやバスケ等の人気競技のチケット先行予約権」などが特典としてあり、

$5,000〜$9,999の支援をした「MVP」と呼ばれるレベルのファンに対しては「レセプションへの招待」などが更なる特典として付いてくるなどの、様々な対価を提供しています。

 

ご紹介した「Uconn Huskies」だけが特殊という訳ではなく、他大学でも同程度(或はそれ以上)のマーケティングがされており、敷地内に10万人規模のスタジアムを持つ大学も存在をしていたりもします。

 

ここまでいくと、もはや日本で一般的に用いられている「アマチュア」という言葉からは対極にあるように感じ、

とにかく規模が桁違いなことに圧倒され、「ここまでするかアメリカ大学スポーツ!」という感覚さえ持ちますが、

このようなレベルで展開されているアメリカ大学スポーツの基盤とも言える、”選手を取り巻く環境”について大きな変化の時を迎えています。

 

■ 学生アスリートは従業員?

 

・大学運動選手は「従業員」 米で労組認める決定(東京新聞)

 

上記記事にもありますが、搔い摘んで説明をすると、大学側は選手達をあくまで「Student Athlete」として位置づけており、いくら10万人を集客した試合を行おうが、放映権料が何百億円で売り買いされようが、基本的には選手は労働者ではないとの考えで過ごしてきました。

プロスポーツクラブの最大のコストは人件費といっても過言では無いため、この大きなコストが抑えられる大学スポーツでは、そこで得た収益を更なる多方面への投資に使える事が出来る事から、プロより儲かるとも言われており、大きな発展を遂げました

しかし、現実的には選手はもはや「従業員」と位置づけられても不思議ではなく、遂に先日、記事のような決定がなされたのであります。

 

このニュースには大きな意味があり、大学スポーツのあり方が変わる可能性も含んでいますが、みなさんはこのニュースをどう考えるでしょうか?

学生スポーツはあくまで学生の課外活動なのだからアマチュア?

そうは言っても現に多額の収益を稼いでいるのだからプロ的だと言える?

アマチュアスポーツとは?プロスポーツとは?という点からも論じることが出来そうなこのトピックは、大学スポーツだけではなく、ドラフト制度などでの連携もあるNBAやNFLなどのメジャースポーツへ影響も与える可能性があり、アメリカのスポーツ界を揺るがす程の大きな出来事になるかもしれません。

 

翻って日本では、まだまだ大学スポーツ自体の存在感がそのポテンシャルほど大きいとは言えませんが、

冒頭でご紹介した早稲田スポーツの新たな展開などにより、大学スポーツの価値が高まれば、将来的に同様の展開になるのでしょうか。

日本でも良い意味で「ここまでするか大学スポーツ!」と言われるような時代が近づいて来ているかもしれません。

 


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山内 一樹
「ミレニアル世代の遊びの選択肢にスポーツを加える」ことを目指し、アクティビティとしてのスポーツの可能性を追求している。Jリーグ・Bリーグ・侍ジャパンといったコンテンツホルダーらとともに、主にSNSの活用を中心としたデジタルマーケティング施策の推進に従事するほか、渋谷区を起点に活動するサッカークラブ TOKYO CITY F.C. を立ち上げ、渋谷から新たなフットボール体験を産み出すための取り組みに挑戦中